リースバック方式での新規店舗開業について

店舗入り口のイメージ画像
「リースバック方式(建設協力金方式)」は、賃貸事業用の分野では、主にロードサイド店舗に多くの事例が見られます。新規で店舗開業しようとしている事業主にとって、リースバック方式とはどのようなものなのか、またメリット・デメリットは何かを見ていきます。さらに、リースバック方式とよく似ている「事業用定期借地権」との違いも合わせて解説します。

リースバック方式とは

「リースバック方式」とは、その土地に出店・開業したいと考える事業主が土地のオーナーに対して、建物の建設資金(建設協力金)を差し入れ(この差入金は低金利または無利子であることが多いようです)、オーナーは差し入れられた資金で建物を建て、その建物を事業主に賃貸するという事業形態です。

 

事業主は、契約に基づいて毎月オーナーに土地・建物の賃料を支払います。当初オーナーが事業主から借りた建設資金は「保証金」をいう名目に変わり、建物賃料が相殺されていく形で、オーナーから事業主に返済していきます。仮に、賃料設定が50万円、保証金の返済が30万円という場合、オーナー側は、完済するまでは実質月額20万円の賃料収入ということになります。

 

リースバック方式は、出店する事業主側に建物の建設資金が必要なので、個人事業主が直接行うのはなかなか難しいでしょう。事例としては、多店舗展開している企業が採用しているケースが多いようです。例えば、ロードサイドのコンビニチェーン店の場合、土地オーナーが必ずしもコンビニ経営もしているわけではありません。フランチャイズでの起業を考えているなら、フランチャイズ本部からリースバック方式の店舗を紹介されることもあるでしょう。

リースバック方式のメリット・デメリット

リースバックのメリット・デメリットを表したイメージ画像

リースバック方式を採用するにあたり、事業主とオーナーには以下のようなメリット・デメリットが考えられます。

 

【事業主のメリット】

・土地を所有することなく、新たに建設された自分の事業のための建物を利用できる

・土地オーナーとの交渉により、収益が見込める立地に出店・開業できる

・建物はオーナー名義の所有物なので、契約終了時に建物を残したまま撤退できる

 

【事業主のデメリット】

・初期費用として高額な建設協力金が必要

・事業計画上の売上見込みを精緻に立て、賃料の設定をしないと、収支バランスが崩れ経営を圧迫してしまう

・オーナーとの契約を中途解約すると、保証金の返還を放棄しなければならなくなる(事業が頓挫してしまった場合、リスクがさらに増える)

 

【オーナーのメリット】

・建物の建設費を自己資金または金融機関からの融資で用意する必要がなく、事業主から無利子もしくは低金利で借りることができる

・土地を手放すことなく資産を有効活用できる

・テナントを募集する必要がなく、もしも事業主が中途解約した場合は、オーナーに保証金の返還義務がなくなる(※中途解約になんらかの特約などがある場合を除く)

 

【オーナーのデメリット】

・建物は土地のオーナーの所有物になるため、建物にかかる固定資産税の支払い義務が生じる

・事業主との契約が終了した場合、建物はそのまま残るが同種の事業以外では継続使用が難しいことが多い。

 

事業主は、自身のメリット・デメリットを理解するだけでなく、オーナー側のメリット・デメリットも押さえておくことで、双方での事業化の話し合いを進めやすくなります。

事業用定期借地権について

リースバック方式とよく似ている土地活用方法として、「事業用定期借地権」があります。これは定期借地権の一種で、以下のような特徴があります。

 

・契約期間(借地期間)は10年以上50年未満

・自動更新はなく、契約期間満了後も借地人が事業を望む場合は、土地オーナーと協議し再契約が必要

・借地権の存続期間が「10年以上30年未満」の場合、契約の更新、建物再築による存続期間の延長、建物買取請求は一切不可

・借地権の存続期間が「30年以上50年未満」の場合、契約の更新、建物再築による存続期間の延長、建物買取請求を不可にする特約が有効にできる(更新は不可、建物買取請求権は認めるなど、どの特約を有効にするかを選べる)

・契約期間満了後、借地人は土地を更地にして返還しなければならない

・借地人は借地に居住用の建物を建ててはいけない

・公正証書により契約を交わさなければならない

 

リースバック方式と事業用定期借地権とどちらがいいかは、一概には言えません。オーナーと事業主それぞれの立場で思惑が違うことに加え、契約期間を含め、長期的な見通しによっても変わってきます。自分のケースはどうなのか、細部まで確認して比較するべきでしょう。専門家に聞くということも必要になるかもしれません。